政経倶楽部【東京】第176回例会(朝食会) 8/1 木

日時:2019年8月1日  開会:~ (開場:)
会場:ルポール麹町 東京都千代田区平河町2-4-3 TEL03-3265-5365 有楽町線「麹町駅」 1番出口より徒歩3分. 有楽町線・半蔵門線 「永田町駅」 5番出口より徒歩5分.
 

「万葉集~令和を生きる経営者が座右銘とすべき言霊(ことだま)」

■岡田幹彦氏 歴史人物研究家 日本政策研究センター主任研究員 

「万葉集~令和を生きる経営者が座右銘とすべき言霊(ことだま)」


【岡田 幹彦 氏 プロフィール】

昭和21年北海道生まれ。国学院大学中退。
学生時代より、日本の歴史、人物の研究をつづけ、月刊『明日への選択』に
多くの人物伝を掲載中。『歴史街道』『歴史通』などにも寄稿。
全国各地で歴史人物の講演活動を行っている。
著書多数。
『東郷平八郎』『乃木希典』『小村寿太郎』(展転社)、『日本を護った軍人の物語』(祥伝社)、『日本の誇り103人』(光明思想社)、
『二宮尊徳』、『維新の先駆者』『親日はかくして生まれた』(日本政策研究センター)、
『日本の偉人物語①二宮尊徳・坂本龍馬・東郷平八郎』
『日本の偉人物語②上杉鷹山・吉田松陰・嘉納治五郎』
『日本の偉人物語③伊能忠敬・西郷隆盛・小村壽太郎』
『日本の偉人物語④塙保己一・島津斉彬・乃木希典』(光明思想社)
『西郷隆盛』(明成社 まほろばシリーズ)等


『万葉集』

日本に現存する最古の和歌集。天皇・皇族、貴族から下級役人、防人(さきもり)などさまざまな身分の人々が詠んだ歌を4500首以上集めたもので、成立は天平宝字3年(759)以後とみられる。万葉仮名で書かれている。
※岡田幹彦著『日本の誇り103人』の解説より


(1)万葉集について
(2)鑑賞    ※ご講義いただいた岡田幹彦選60首の中から15首抜粋
~「大君は神にしませば」「言霊」「神ながら」「子への愛」「恋愛歌」「防人」等
(3)新元号「令和」の出典
(4)質疑応答
(5)岡田先生ご推薦紹介書籍


(1)万葉集について

●万葉の和歌を知ることは、日本と日本人を知ること

万葉集の歌を知ることは、日本人の神道に基づく信仰、心性、感情、生き方、民俗を知ることだ。すなわち、日本と日本人を知ることになる。


●万葉集の和歌の主題は、神道(しんとう)的感情

万葉集の主題は、次の4つ。
①「天地、自然と人間の一体」を歌う。
②「死者と生者の一体」を歌う。
亡くなった人への思い、慰霊を歌っている。その悲しみの歌を挽歌(ばんか)と言う。その最大の歌い手が柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)。
③「親子、夫婦、男女が互いに深く思いやる心情」を歌う。
これを「相聞(そうもん)」という。「したしみ」の歌である。
④「日本の国の中心である天皇陛下、祖国日本を愛する心情」を歌う。
この4つこそ、神道的心性感情だ。


●日本の根本宗教は、神道。「神ながら(カムナガラ)の道」の結晶が和歌

仏教や儒教が入ってくる前から、神道はあった。仏教や儒教が入ってきて区別するために神道と名をつけた。日本語では「神の道」。万葉の言葉でいえば、神ながら(カムナガラ)の道。カムナガラの道の結晶が和歌だ。
キリスト教や仏教には経典があるが、神道には経典がないと言われる。だが、万葉集、あるいは古事記や日本書紀が神道の経典と言えよう。
人間は本来、民族共同体であり、人々は分かちがたく深く結び合っている。ばらばらではない、個人ではないということだ。
戦後は、個人主義で「個」を強調しすぎた。人間は一人で生きているのではない、結び合って生きている。この結び合っている存在を、日本人は理屈ではなく、至上の文字形式、三十一文字の和歌でみごとに表現した。
1300年前から存在する和歌というものを今日まで連綿として受け継いでいる。


●万葉集を座右銘に。渡部昇一氏、保田與重郎氏の言葉

「万葉の名歌を5首でも10首でもすらすら暗唱できるということが日本人の資格のひとつだ」。 これは、故・渡部昇一氏の言葉だ。
また、万葉集研究に命をかけた文芸評論家、故・保田與重郎氏は、「万葉集の中で、10首をしみじみ味わえたなら十分な生き甲斐だ」とまで言っている。
今日は岡田60選を解説するが、皆さんもお好きな歌を座右の銘としてほしい。


(2)鑑賞  ※ご講義いただいた岡田幹彦選60首の中から15首抜粋

●「大君(おおきみ)は神にしませば」~天皇陛下は神様。万葉集の大きな主題の一つ。

大君(おおきみ)は 神にしませば 天(あま)雲(くも)の 雷(いかづち)の上(え)に 廬(いおり)せすかも
(巻三 235 柿本(かきのもとの)人麻呂(ひとまろ))
(大君は神でいらっしゃるから、大空の雷の上に仮宮を作っていらっしゃる)

大君とは天皇のこと。持統(じとう)天皇が雷(いかずち)の丘(おか)にお出ましになった時に、柿本人麻呂が詠んだ名歌。柿本人麻呂は、宮廷歌人(儀式や宴の時に代表して歌を詠む)でもあり、歌聖のなかの歌聖である。
「大君は神にしませば」は、万葉集によく出てくる言葉で大きな主題の一つだ。
我が国の中心でいらっしゃる天皇陛下は生きた神様だと皆が思った。
雷の丘を、天空にある実際の雷のように見なして歌っている。


●「言霊(ことだま)」~言葉にしたことは霊力の助けによって実現する

磯(し)城島(きしま)の 大和(やまと)の國は 言霊(ことだま)の幸(さき)はふ國ぞ 真(ま)幸(さき)くありこそ
(巻十三 3254 柿本人麻呂)
(日本の国は言霊が幸をもたらす国です。私のこの言葉によってどうぞご無事で幸福でいらしてください)

「言霊」とは言葉の持つ不思議な力。言葉には神の霊力がこもっていて、言葉にしたことは霊力の助けによって実現すると考えられていた。
「磯城島の」は大和にかかる枕詞(まくらことば)。
磯城島とは日本のことで、「磯城島の道」といえば和歌、言の葉の道。言の葉の真(まこと)の道が和歌だ。言の葉の道を言葉でいうと、神ながら(カムナガラ)の道だ。

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