政経倶楽部【東京】第89回例会5/10木(朝食会)

日時:2012年5月10日  開会:~ (開場:)
会場:ルポール麹町 東京都千代田区平河町2-4-3 TEL03-3265-5365 有楽町線「麹町駅」 1番出口より徒歩3分. 有楽町線・半蔵門線 「永田町駅」 5番出口より徒歩5分.
 

海洋をめぐる国際情勢と海上自衛隊

■講演:久野敬市氏 海上自衛隊幹部学校研究部長
「海洋をめぐる国際情勢と海上自衛隊」

今日は、日本の海洋をめぐる国際情勢はどうなっているのか、そこで我々海上自衛隊は、どういうことを行い、何を目指しているのかをご紹介したい。

(1)冷戦期のわが国周辺の戦略環境
 冷戦期は、米ソを中心とする2極構造があり、その核戦力を背景として核抑止が効いていた(恐怖の均衡)。
 地政学的に日本は、宗谷、津軽、対馬の3海峡を持ち、極東ソ連海軍が太平洋に出ることを制する、ということで西側陣営に寄与できる位置にあった。

(2)海上自衛隊の活動の地理的拡大と海上交通路をめぐる懸念
●海上輸送路に沿った海外任務
 現在、海上自衛隊の任務は地理的に拡大してきている。平成3年の掃海部隊のペルシャ湾派遣から始まり、日本の生命線ともいえるオイルルート(中東から日本に至る海上交通路)、輸送ルートを中心に、PKO、緊急援助活動、また、日本周辺では、不審船への対応、弾道ミサイルへの対応等をしている。

●中東/アフリカ~ソマリア沖アデン湾~東南アジア~マラッカ・シンガポール海峡の運行の安全確保
冷戦後、日本からから中東に至るまでの海上輸送路に沿って、給油支援や海賊対処活動など海上自衛隊の任務が広がった。
ペルシャ湾の出口のホルムズ海峡、ソマリア沖アデン湾、マラッカ海峡を通って、日本に至るまでのシーレーン(海上交通路)に、非常に懸念がある。マラッカ、シンガポール海峡では、一昔前まで凄惨な海賊活動があったが、日本を含めて、沿岸国が治安活動に貢献して、非常に落ち着いてきている。

(3)南シナ海における中国海軍の海洋展開と沿岸国との軋轢
南シナ海は、交通の要衝だ。日本の海外貿易は貿易量の(輸出額合計)の99.7%が海上貿易で、貨物、油、全てのルートの多くが南シナ海を経由している。
南シナ海は、中国、フィリピン、ベトナム等が、それぞれに領有を主張する海域が入り組んで重なっており、衝突が絶えない。中国の「海監」によるベトナムの科学調査船のケーブル切断、南沙諸島で中国艦船がフィリピン漁船を銃撃、またベトナム漁船が小銃で銃撃される等、「海監」や「漁政」と言われる洋上警察権を発揮する、中国公船の活動が先鋭的だ。
 海軍艦艇については、中国には3つの艦隊(北海、東海、南海)があり、南シナ海は南海艦隊が頻繁に周回行動をしている。これは、海軍艦艇としての示威行動だ。なぜこうことが起きるか。沿岸国の海軍艦艇が中国の海軍艦艇に対抗するだけの力がないからだ。これは、南シナ海で中国が自由に行動できる、ということを意味する。
 
(4)東シナ海における中国海軍の外洋展開と日米の海洋戦略
 地図を逆さにして、中国側から西太平洋を見ると、日本列島は、広い太平洋に出るためには蓋をしているように見える。これが中国の視点だ。

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