政経倶楽部【東京】第98回例会 2/14木(朝食会)

日時:2013年2月14日  開会:~ (開場:)
会場:ルポール麹町 東京都千代田区平河町2-4-3 TEL03-3265-5365 有楽町線「麹町駅」 1番出口より徒歩3分. 有楽町線・半蔵門線 「永田町駅」 5番出口より徒歩5分.
 

よくわかる!世界の中の、中東と日本

■講演 大野元裕氏 参議院議員・前防衛大臣政務官(民主党)
「よくわかる!世界の中の、中東と日本」

【大野元裕(おおの・もとひろ)氏プロフィール】
昭和38年生まれ49歳。埼玉県川口市出身。慶應大学法学部卒業後、国際大学国際関係学科修士課程修了(中東地域研究専攻)。平成元年、在イラク日本大使館専門調査員を皮切りに、13年間、アラブ、カタル、ヨルダン、シリア等中東諸国の大使館に勤務。その後、(株)ゼネラルサービス取締役統括本部長、専務取締役を経て、現在は役員。ニッポン放送「おはようGOOD DAY」コメンテーターも3年間務める等メディアでもひろく活躍。平成22年7月、埼玉選挙区選出参議院議員。平成24年10月から12月まで、防衛大臣政務官、参議院外交防衛委員会委員。現在、(財)中東調査会客員研究員、(財)日本エネルギー研究所客員研究員、日本大学国際関係学部非常勤講師も務める。
中東に関する著書、論文等多数。私生活では三児の父。趣味はスポーツ(水泳、柔道、アメリカンフットボール)、音楽(楽器はベースギター)等。

●中東を知るために、まず偏見から自由になろう~多くは普通の人々
私は13年間、中東、特にイラクやシリアなど比較的独裁者の多い、怖い国に住んだことがある。皆さんが抱く、中東のイメージは、「暑い、怖い、貧しい、イスラム教、砂漠、石油、テロリスト、遊牧民…」といったものが多いと思う。 
たしかに正しい面もある。だが、ただ貧しいばかりではなく、とんでもない金持ちの側面もある。アラブの某皇太子ご一行の東京滞在時は、帝国ホテルの2フロア全室を貸切り、ワンフロア全室に高級デパートの商品を並べ、部屋の商品を丸ごと全部お買い上げ、ということもあった。さらには某政治家の妻子は飛行機747機に乗りきれないほどの買い物をし、船を仕立てたこともあった。
それほどの豊かさもある一方、イエメン、スーダン、マリなどは年間1000ドルに満たない収入で靴さえ履いていない人々が多い。貧富の差が大変激しい。
気候はドバイの砂漠のあたりは大変暑いが、シリアのゴラン高原には万年雪もある。レバノンは白い国(雪の国)という意味で夏でもスキーができる。また遊牧民もいるにはいるが決して多くはない。テロリストもいるがごく少数だ。
つまり、ほとんどの中東の人々は普通の人々だ。ただ、その中に、過激な人々もいる。なぜ、過激になってしまうのかは後述する。

●「中東とは?」~曖昧な概念だが、貫くものは「イスラム教」「テロの拠点」
 中東とはどこか。定義はない。そもそも、中東とは、ヨーロッパの概念で、ヨーロッパから見て、中くらいの東の意味。日本はずっと遠くの「極東」。
 日本の外務省では、パキスタン、イランを一番東とし、西は、アフリカのモロッコ、モーリタニアあたり、南は、スーダンあたりまでを指している。
 つまり、だいたいのぼんやりした概念なのだが、貫く大きな要素はイスラム教だ。イスラエルを除いて、ほとんどの国にイスラム教徒が住んでいる。
 そして、残念ながら、テロリストのホームグランドでもある。

●リスクがあっても、中東の石油に依存せざるを得ない日本
 ならば、「テロリストが多くて暑くて遠い中東とは、つきあわなくてもいいだろう」というのが長い間の日本の結論だった。
だが今、特に311以降、日本は極めて大きな形で中東の石油に依存しており、依存せざるを得ない状況にある。世界の石油の埋蔵量は、富士山2杯分ほどしかない。わずかな量が、中東地域に偏在している。だから貴重なのだ。
しかし、今までに石油は本当に足らなくなったことはないのもまた、事実だ。

●石油は政治的商品~投機と政治状況で価格が決まる
 石油の埋蔵量は正確には誰にもわかっていない。おもしろい話がある。石油価格が上がりだすと日本近海から石油タンカーが消える。これは何を意味するか。石油を中東で買い付けて、今日50ドルで40日後に70ドルに上がるとなれば、タンカーをずっと海上に浮かべておく。値が下がり始めると港に入ってくる。タンカーの用船状況を見れば石油のトレンドがわかるという時期があった。
 石油は政治的商品である。石油の値が跳ね上がるときは、必ず政治動乱が関わっている。特に2001年の911以降はずっと上がり続けている。需要と供給だけで決まるのであれば、経済学者が予測できるがそうではない。
経済専門家の石油価格予想が当たったためしがないのはそのためだ。

●オイルマネーの投資先が日本にも向かっている
 オイルマネー(中東諸国が石油の輸出によって稼いだ金)の動向も日本に関わってきている。一般論として、中東はこれまでは、そのほとんどをアメリカに投資してきた。ところがこの10年それが崩れている。かつては8割をアメリカに投資していたが、今は、3:3:3:1(=アメリカ:ヨーロッパ:アジア:中東)と投資行動が変わってきている。つまり日本のように安定して運用できるところも投資先に選んできている。
こういった投資面でも、日本と中東の関係は関係が深くなってきている。

●イスラム教は社会的宗教~イスラム法には統治や税の治め方の記述あり
 宗教である以上、救済宗教であることは当然だが、イスラム教は、一番最初の時期に成功し世界帝国を築いた社会的宗教である。つまり、愛とかそういった価値観だけではなく、目先の社会を相手にする宗教だということだ。これがポイントだ。
 イスラム教の中のイスラム法には、非常におもしろいことに、統治の仕方や税金の在り方なども書いてある。また、公平で平等で社会を活性化することを掲げている。例えば、余っているお金を貧しい人に分配する仕組みがある。1000万円儲けた人がいて800万は使ったが1年間200万退蔵していたら、10%を貧しい人に寄付する仕組みになっている。

●イスラム教は他宗教に寛容~他宗教徒には徴兵でなく税金(防衛費)を課す
他宗教への寛容さも、イスラム教の特徴だ。
 イスラム教はそもそも同じ場所でユダヤ教があり、キリスト教があり、その後に出てきた改訂版宗教だ。イスラム教には「宗教に強制なし」と言う言葉があり、自分の自由意思で入るのが原則となっている。
自由意思ということは、他の宗教を信仰する自由も認められている。つまり、他の宗教もあるということが前提となっている。
従って、コーランの中には、異教徒の扱い方も書いてある。例えば、自分たちのコミュニティの中にいる、キリスト教徒やユダヤ教徒には税金(防衛費)を課す。イスラム教徒は徴兵で防衛の義務を負うが、他宗教徒は徴兵を免除されるので税金を課すというわけだ。このように、ルールはすべて宗教で決めている。これがイスラム教の寛容さだが、問題はここから先だ。

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