政経倶楽部【東京】第97回例会 1/10木(朝食会)
日時:2013年1月10日 開会:~ (開場:)会場:ルポール麹町 東京都千代田区平河町2-4-3 TEL03-3265-5365 有楽町線「麹町駅」 1番出口より徒歩3分. 有楽町線・半蔵門線 「永田町駅」 5番出口より徒歩5分.
今求められるリーダーシップと青山社中の歩みについて
■講演 朝比奈一郎氏
「今求められるリーダーシップと青山社中の歩みについて」
【朝比奈一郎氏・プロフィール】
青山社中㈱ 筆頭代表CEO 。1973年東京都生まれ39歳。東京大学法学部卒業。ハーバード大行政大学院修了(修士)。経済産業省でエネルギー政策、インフラ輸出政策などを担当。
アジア等への新興国へのインフラ・システム輸出では省内で中心的役割を果たす。小泉内閣では、内閣官房に出向。特殊法人・独立行政法人改革に携わる。外務省「世界の中の日本:30人委員会」委員(2006年)。 「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」前(初代)代表。 現在、中央大学(公共政策研究科)客員教授、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。主な著書に「霞ヶ関構造改革・プロジェクトK」(2005年・東洋経済新報社)、「霞ヶ関維新」(2009年・英治出版)等。
政経倶楽部では2年前の2月に講演した。当時は青山社中を設立して3か月目、菅政権だった。その後、野田さんも総理になられ、隔世の感がある。
本日は、「政局」「青山社中の歩み」「求められるリーダーシップ」の3本立てで話を進めさせていただく。
(1) 政局
●経済政策~マクロ経済政策とミクロ経済政策
安倍政権は、参議院選挙までは、「経済」を優先順位の1位に掲げて取り組んでいく姿勢だ。進め方は大きく2つ。
まずは、「マクロ経済政策」。金融緩和、財政出動を最大限に行うため、「経済財政諮問会議」を復活させ、司令塔にして進める。
もう1つは、「ミクロ経済政策」。個別の産業をどう活性化させるかということ。「経済再生本部」を作り、その下に「産業競争会議」を作り進めていく。
ミクロ政策の3つの柱は、「製造業の復活」「企業の海外展開の支援」「成長分野を伸ばす」ということ。如実な特色は「製造業の復活」だ。
民主党による「医療や介護など福祉関係従事者を増やし、失業率を低くすることに成功した」という主張は、「製造業で450万円年収だった人たちを、年収300万円の介護労働者に移しただけだ」との見方もある。
地域の疲弊の問題と合わせて、製造業が海外に逃げていかないよう、地域にお金を入れるべきという議論もある。一方で、大企業は国際競争の中、「海外展開」で工場を海外へシフトし、自治体によっては数千人規模の失業者が生まれるという雇用問題も生じている。
●今後、経済はどうなるのか
今後、経済がどうなっていくかの見方の鍵は2つある。
1つは、潜在成長率を上げられるかということだ。
マクロ政策のなかで、景気の雰囲気を作ることは大事であり、金融緩和と財政出動は大事だが、これで本質的な潜在的な日本の成長率があがる政策かというと難しい。要は、イノベーションを起こせるのかということだ。明治維新の時のような既得権益に食い込む改革ができるのかだ。
もう1つは「内ゲバ(経産省vs財務省)」に終わる懸念だ。
安倍政権になり経産省が活気づいているが、ファンドを作ってどんどんぶち込もう、ということなので、財政は大丈夫なのか、ということだ。
人事を見ると、経産省の役人が政務秘書官に抜擢され、官房副長官や内閣参与には財務省出身者が就いた。陣取り合戦が激しくなっているとも見える。
TPP、日銀総裁、閣僚の失言など、いくつかの地雷はあるが、なんとかうまく数か月を乗り切って、7月の参院選に勝ち、本格的改革で、憲法改正、河野談話の見直し等に乗り出してくれることに期待したい。
●グローバルリーダーの要点は、相手の立場で考えられるか否か
グローバルリーダーの最大のポイントは、相手の立場に立って考えられるかどうかということにある。これは、日本人は本来得意なはずだが、グローバルな局面に立つと下手だと思うことが多い。
竹島や尖閣問題など、我が国の領土であることを、豊富なネタを持ってきちんと説明できても、果たして相手の立場に立って上手く伝えられているのか。
例えば、アメリカ側はどう見るか。尖閣も竹島も北方領土など、個別事情はよくわかるが、かたや尖閣で中国と戦争になるかもしれないという時に、「脱原発」などと言っていては、日本の総合戦略が見えない。アメリカにしてみればさんざん騒いで、最後に助けだけ求められるのは勘弁してほしい、ということだ。
原発問題、領土問題、いろいろ絡んで今後ますます難しい局面で、日本の主張をいかに伝えるかリーダーの力量が問われていく。
●ガバナンス改革を求めた20年~「日本新党」「小泉政権」「民主党政権交代」
今回の衆院選で「日本維新の会」が評価されたのは、ガバナンス(統治)改革を主張していたことにある。
実は、この20年を振り返ると「既成の体制ではだめだ」という勢力が持ちあがっては従来型の自民党体制に戻る、という動きが繰り返されてきた。
3つの動きがあった。まず90年代前半。熊本県知事だった細川護煕氏が「地方からの決起」を掲げて日本新党を結党したが、本格的改革に至らぬまま自民党が復帰。2回目は「自民党をぶっ壊せ」と言った小泉政権。小泉さんはリーダーとしては優秀で、郵政民営化など一定の成果はあげたが、ガバナンス改革には至らず、結局は、福田政権、麻生政権という典型的な自民党政治に戻った。
3回目が2009年の民主党の政権交代。「脱官僚」を掲げマニフェストはガバナンス改革を中心に据えていたが、失速して、また自民党に戻った。
今回、安倍政権が、旧来的自民党になるのか、ニュー自民党になるのかが分かれ目。「日本維新の会」が大きな期待を集めたのは、大きなガバナンス改革をやってくれるのではないかと思われたからだ。
(2) 青山社中の歩み
●「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」
約16年前の1997年、私は霞ヶ関に入り、14年間官僚として働いた。私も、「ガバナンス改革を霞ヶ関の局面でやらねばならない」とずっと思っていた。
私が経産省に入省した1997年当時、橋本龍太郎総理は、5大改革(財政構造改革、経済構造改革、社会保障改革、行政改革、金融システム改革)を掲げていた。言葉こそ違うが、16年前も、今も、結局同じようなことを言っている。
では、この16年間、政治家や官僚は何をやっていたのか?官僚も政治家もけっしてさぼっているわけではない。むしろ命を削って働いている。日本で一番優秀とされる人たちを集めて一所懸命働いているのになぜよくならないのか?
どうして「成績のあがらない受験生」になってしまっているのか。“勉強”にものすごく時間をかけているが、日本はよくならない。ならば、やり方を変えていくしかない。
そこで、入省7年目に同期の仲間で省庁横断的に「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」を立ち上げた。この会は、単なる勉強会ではなく、行動の会とし、批判するのではなく、建設的な提案をし、点の改革ではなく面の改革をする会とした。
問題点は何で、原因は何で、目指すべき国家像や方向性はどうで、そのための改革案はどうすべきか。これを2年に渡り、深夜休日に検討し、実名入りで2冊の本も出版し、世に訴えた。
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